ネイティブに"perfect"と言われた私の発音

 1ヶ月ほど前に知り合った外国人(たぶんアメリカ人)に自分の英語を褒められたのだが、どうも英語力というより発音がいいらしい。というか、完璧と言われた。発音に関しては密かに自信を持っていたので、嬉しかった。実は、ドイツ文学を専攻していた大学時代にもネイティブの教授にドイツ語の発音を褒められたことがある。そのときは、「とてもきれいな」発音だと言われた。だから、英語に限らず、発音には自信がある。知らない言葉でも、少し練習すれば短期間でネイティブのように発音できるようになる自信さえある。

 

 ネイティブをして「完璧」と言わしめた私の英語の発音。どのようにして身につけたのかと言えば、それはもうひたすら練習して口と耳を鍛えたと言う他はない。発音は筋肉の活動、すなわち運動だからだ。何かコツを聞けばすぐにできるようになるというものではない。ただ、私が証明したように、非ネイティブでも十分に練習すれば「完璧」と言われるくらいにはなれる。そういえば、件の外国人に、「本当に日本人ですか?」とまで言われた。まあ、それくらいにはなれる。

 

 こういう話を聞くと、「もともとセンスがあったのではないか?」とか、「海外で暮らしていたことがあるのではないか?」などという疑問が生じるかもしれないが、私には海外在住経験はないし、そもそも私は発音が苦手だったのである。発音が苦手で、それが英語の勉強の足枷になっていると思ったからこそ、発音を練習し始めたのだ。

 

 歴史は中学1年生まで遡る。私は英語に苦手意識があった。小学生の頃に公文式をやっていたので、文法には多少のアドバンテージがあったが、英語があまり好きではなかった。それは、授業中に英語を読まされるのが嫌だったからだ。そう、みんなと同じで、英語を発音するのが恥ずかしかったのだ。

 

 英語に対する苦手意識の原因が発音にあると認識したその日から、私は密かに特訓を始めた。といっても、人の前でやるのは恥ずかしいので、夜、布団を頭からかぶって、その中で隠れて練習したのを今でも覚えている。

 

 練習といっても、闇雲にやったのではダメだから、発音の仕方の説明(辞書に載っていた)を参考にしつつ、リスニング用の音源を聴いて、真似することから始めた。すると、いくつかコツのようなものが掴めてきた。"milk"は「ミルク」というよりも、「ミゥク」に近いとか、"father"や"mother"の語尾の「アー」の部分は、ウの口にするとそれっぽくなるとか。

 

 だが、これもみなさん身に覚えがあることだろうが、英語を英語らしく発音しようとすると、バカにされることがある。「なんだあいつかっこつけちゃって」みたいな目線。「意識高い系」という言葉もそうだが、向上しようとしている人をバカにするような輩は最低だと思う。幸い、私は当時、いわゆる「空気の読めない」人間だったので、特に気にすることなく練習の成果を授業で発揮できた。とはいえ、最初のうちは、まだまだ不完全であったため、アメリカかぶれの帰国子女にみんなの前で「発音が変」などと言われたこともあった。それは少なからず不快な思い出なのだが、その時点でもそいつの発音は「大したことない」ことが分かっていたので、意気消沈することなく、その後も訓練を続けた。もし今そいつが私の発音を聞いたら、悔しがるかもしれない。へっ、ざまあみろ。

 

 昔話はこれくらいにしておこう。今、英語の発音がうまくできなくて困っている人が、英語の発音をネイティブ・レベルまで持っていくには、どうしたらよいのか。あるいは、少しでもマシにするためにはどのような練習をしたらよいのだろうか。

 

 まず断っておきたいのは、言語を学ぶ上で発音は「非常に重要」だということである。というか、私個人としては、いくらペラペラ喋れても発音がちゃんとしていなかったら、全然ダメだと思う。控えめに言っても、かっこ悪い。少なくとも、「マスターしている」とは言えない。つまり、(私としては当たり前のことだが)言語の学習に「発音」は含まれている。この点を明確にしておきたい。発音ができていなければ、その言語ができていることにはならない。(実際、日本語がペラペラに喋れていてもイントネーションがめちゃくちゃだったら、せいぜい「日本語がお上手ですね」止まりであって、「ひょっとして日本人ですか?」とはならないだろう。)

 

 だから、まずは「発音は大事」と認識すること。通じればいいとか伝わればいいとか、そういうことでもないので、注意してほしい。発音が大事なのは当たり前なので理由の説明は難しいが、あえて説明するとすれば、「発音の仕方自体にその言語の文化が多分に含まれている」ということだ。つまり、"world"を「ワールド」と発音してしまうそのノリと、それをネイティブのように"world"と発音するノリとでは、全然違うということだ。英語の語順に彼らの思考回路が反映されているとするなら、それと同程度に、発音に彼らの「気持ち」が反映されている。そう思ってほしい。

 

 発音は大事だと認識できたなら、あとはとにかく練習だ。『英語耳』という本がおすすめである。必要な情報は全部載っているから、この本を使いながらまず単語の発音を練習する。単語の発音がある程度できるようになってきたら、適当なリスニング音源を聴きながら文章の読みもできるようにする。(本来なら英会話の中で培うべきものなのかもしれないが、全員が英会話の機会を持てるわけではないので、一人でできる訓練法を提示している。文章ばかり読んでいると自然な会話のリズムは学べないが、発音の基本は学べる。)

 

 まとめ

・発音は大事

・発音は訓練で習得する

・訓練は、耳と口の両方を使う

・発音がうまくなると、ネイティブの評価が上がる